失敗・廃業の事例に学ぶ
開業して数年のうちに、事務所を閉じる行政書士は少なくありません。うまくいかなかった事例には、共通する原因があります。先に知っておけば、同じ失敗は避けられます。
Key pointsこの記事の要点
- 廃業の原因は、資金・経営・伝える力・実務・法令の意識の5つに分けられる
- 経験のない業務を何でも受けない。売上を1社に頼りすぎない
- 書類は時間をあけて見直し、ミスは仕組みで減らす
- 中身を確かめられない「申請だけ」の依頼は受けない
廃業につながる5つの原因
運営者の周りでも、開業してしばらくして事務所を閉じた方を何人も見てきました。原因をふり返ると、次の5つのどれか、またはいくつかが重なっています。
| 原因 | よくある状態 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 資金が足りない | 集客にお金をかけられないまま、手元の資金が尽きる | 開業資金に余裕を持ち、広告などの集客に使う予算を先に確保する |
| 経営の視点がない | 「仕事をください」と人に頼る。売り方や集客を学ばない | 行政書士の仕事も事業と考え、サービスと集客の仕組みを自分で作る |
| 伝える力が足りない | 説明が伝わらず、面談からご依頼につながらない | 業務の流れ・料金・必要書類を、書面で示しながら説明する |
| 実務の準備が足りない | 経験のない業務を手探りで受け、ミスやトラブルになる | 手引き・実務書・書式を開業前にそろえ、受ける業務をしぼる |
| 法令を守る意識が低い | 危ない依頼を受け、信用や登録を失う | 怪しい依頼は受けない。業際(他士業の業務)にふみ込まない |
なかでも多いのが、資金と経営の問題です。人脈やコネがないまま開業する場合、集客にかけるお金がなくなった時点で、新しいご依頼が止まってしまいます。
運営者が見てきた廃業の事例
事例1 何でも受けて、手が回らなくなった
舞い込んだ仕事はすべて受け、難しい案件も積極的に引き受けていた先生がいました。本も出し、外から見ると順調そのものでしたが、ある日突然、廃業のお知らせが届きました。
行政書士の仕事は、実務の知識だけでなく、それぞれの業界の慣習を知らないと、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。経験のない業務を受けるときは、慎重すぎるくらいでちょうどよいのです。
事例2 売上の9割を1社に頼っていた
もう一人は、売上の9割以上を1社からの仕事に頼っていました。行政書士や補助者を雇って体制を広げていたところに、その1社との取引が終わり、事務所を続けられなくなりました。
大きな取引先からまとまって仕事が来るのはありがたいことですが、頼りすぎるのは危険です。業務の分野とお客様を少しずつ広げ、収入の柱を複数持っておくことが大切です。
書類のミスを防ぐ
行政書士は書類作成の専門家ですが、誤字や脱字は、誰でも一度はしてしまいます。たとえば、印鑑証明書と一字一句同じに書かなければならない住所や氏名で、難しい字は合っているのに、簡単な字をまちがえる、ということが起こります。
自分で作った書類は、何度見直しても、思い込みで読み飛ばしてしまいがちです。1人で開業している場合は、次の方法が効果的です。
- 時間をあけて見直す:朝作った書類は夜に、夜作った書類は翌朝に。さらに時間をあけてもう一度
- 声に出して、元の書類と1行ずつ照らし合わせる
- 捨印をいただける書類は、いただいておく(使わずに済むのがいちばんです)
家族に確認してもらうのは、守秘義務があるのでできません。ミスをゼロにはできなくても、仕組みで最小限にすることはできます。ミスをしたときは、すぐにお客様と役所に連絡し、誠実に対応することが、何より信用を守ります。
危ない依頼は受けない
「書類はこちらで作るので、申請だけ代わりに出してほしい。報酬ははずみます」。こうした依頼には気をつけてください。
自分で書類を作れるなら、申請も自分でできるはずです。行政書士に頼みたい理由が、内容に問題のある書類を通りやすくするためだった、ということもあります。申請を代理すれば、書類の中身にも責任を負います。後で問題になってから「書類は作っていない」と言っても通りません。
- 中身を確かめられない書類の、申請だけの代理は受けない
- アドバイスをしても「このままでいい」と言う依頼は断る
- 相場より高い報酬を、依頼する側から提示してくる場合は特に注意する
目先の報酬より、資格と信用を守ることのほうが、ずっと大切です。
※制度や手数料などは変わることがあります。手続きの最新の内容は、各機関の公式の情報でご確認ください。


