Case file処分・不祥事の事例集

行政書士の懲戒処分・不祥事の事例集

最終確認日掲載中の事例14件更新毎週月曜に確認

都道府県知事による行政書士の懲戒処分と、行政書士が関わった事件を、類型ごとに整理しました。処分の多くは、特別な悪意からではなく、手続きの遅れを隠す、確認を省く、任せきりにする、といった日々の業務の延長で起きています。同じことを起こさないための参考にしてください。

Key pointsこのページの要点

  • 懲戒処分は都道府県知事が行い、戒告・2年以内の業務停止・業務の禁止の3種類がある
  • 最近の処分で多いのは、受任した手続きを進めずに「申請済み」と伝える例と、事務所・帳簿などの基本的な義務の違反
  • 遅れを隠すうちに、許可証や通知書の偽造まで進み、業務の禁止になった例もある
  • 進み具合の管理・裏付けの確認・補助者の監督・帳簿の備え付けで、多くは防げる

このページでは、処分を受けた方の氏名・事務所名・会社名は載せていません。事例は、同じことを起こさないための参考としてまとめています。事例の出典(都道府県の発表・日行連の公表・報道)は種類と日付だけを示し、リンクは貼っていません。

最近の処分・事件

直近3年の、都道府県知事による懲戒処分と、行政書士が関わった事件の報道です(懲戒13件・事件1件)。3年を過ぎた事例は、このページから自動で外します。

類型で絞り込む

  1. 岐阜県業務停止1年

    業務の不履行・虚偽の説明

    建設業許可・産廃許可などの依頼14件を受けながら申請せず、前払いの報酬の多くを返さなかった。申請書の写しの受付日を書き換えて依頼者に送ったほか、帳簿の不記載、領収証の不交付、変更登録の未申請、会費の滞納も重なった例です。

    行政書士法第14条第2号(第6条の4・第9条・第10条・第13条、同法施行規則第7条・第10条違反)

    出典日行連の公表(2026年9月28日の処分)

  2. 富山県戒告

    補助金・給付金の不正

    社会保険労務士を兼ねる行政書士が、助成金の申請で、届け出ていない就業規則に他社書類の労基署受付印を切り貼りして複写し、届出済みに見せて提出した。社労士として業務停止1年を受けた行為が、行政書士の信用も損なうとされた例です。

    行政書士法第10条・第14条

    出典日行連の公表(2026年9月17日の処分)

  3. 群馬県戒告

    職務上請求書の不正使用

    紛争の一方の親族から頼まれ、相手方から依頼を受けたように職務上請求書に偽りを書いて戸籍等を請求した。相手方がDV等の支援措置で交付制限中と知った後も請求を続け、取得した除籍謄本等を依頼者に渡した例です。

    行政書士法第10条・第13条、職務上請求書の適正な使用及び取扱いに関する規則第5条・第8条第1項

    出典日行連の公表(2026年8月20日の処分)

  4. 大阪府業務停止1月

    名義貸し・補助者任せ

    事務所の補助者や事務員が、車庫証明で使用の本拠を示すため宛名を書き換えた封筒の写しを警察署に出して十件ほど証明を取り、補助者登録のない事務員が封印も行った。行政書士は事務員への指導監督を怠り、不正に気づかなかった例です。

    行政書士法第14条(第1条の2第1項・第10条違反)※条番号は処分書の表記

    出典日行連の公表(2026年8月10日の処分)

  5. 大阪府戒告

    帳簿・事務所などの義務違反

    名簿に登録した所在地に事務所を置いていない状態が、行政書士会の廃業勧告の後も府の確認時まで続いていた。どこにも事務所がないなら事務所設置義務、別の場所にあるなら変更登録義務に反するとされた例です。

    行政書士法第14条(第8条第1項または第6条の4違反)

    出典日行連の公表(2026年7月3日の処分)

  6. 大阪府戒告

    業務の不履行・虚偽の説明

    建設業許可の更新申請などを受任したのに、約7か月にわたり手を付けず、結果として依頼者の建設業許可を失効させた。遅れた正当な理由も見当たらないとされた例です。

    行政書士法第14条(第1条の2第1項違反)※条番号は処分書の表記

    出典日行連の公表(2026年5月15日の処分)

  7. 大阪府戒告

    帳簿・事務所などの義務違反

    登録した所在地に事務所を設けていない状態が、行政書士会による廃業勧告の後も府の確認時まで続いていた。事務所設置義務または変更登録義務に反するとされた例です。

    行政書士法第14条(第8条第1項または第6条の4違反)

    出典日行連の公表(2026年4月13日の処分)

  8. 愛知県業務禁止

    職務上請求書の不正使用

    約3年の間に職務上請求書24枚で住民票や戸籍を取得し、所在不明者の住所調べや自身の不動産業の営業など業務外に使ったほか、目的の偽りや死亡者・補助者を依頼者と書く記載もあった。登録抹消となる最も重い処分の例です。

    行政書士法第14条第3号(第10条・第13条違反)

    出典都道府県の発表(2026年3月26日の処分)

  9. 神奈川県業務停止2月

    業務の不履行・虚偽の説明

    古物商許可申請と公正証書作成の依頼で報酬を受け取りながら手続を進めず、進めているかのような偽りの説明をした末に連絡を絶った。登録した事務所から退去したのに新しい事務所を設けず、変更登録もしなかった例です。

    行政書士法第14条第2号(重大な非行、第6条の4・第8条第1項違反)

    出典都道府県の発表(2026年3月16日の処分)

  10. 三重県業務停止6月

    帳簿・事務所などの義務違反

    約9年半にわたり行政書士会の会費を滞納し、会から訴えられて敗訴した。住所の変更や、法人の社員でなくなったことによる事務所所在地の変更も長年届け出ず、廃業勧告の後も直さなかった例です。

    行政書士法第14条第2号、第13条、第6条の4

    出典日行連の公表(2025年12月15日の処分)

  11. 福岡県戒告

    業務の不履行・虚偽の説明

    小規模事業者持続化補助金の申請をしていないのに、依頼者に申請済みと思わせる説明をした。県の立入検査の時点で、法で定められた業務の帳簿も作っていなかった例です。

    行政書士法第14条第1号(第9条・第10条違反)

    出典都道府県の発表(2025年9月10日の処分)

  12. 鹿児島県業務停止3月

    他士業の業務(非弁・非司など)

    社会保険労務士でないのに、就業規則などの作成を業として5件行った。労働局から文書で指導を受けた後も、翌年に同じ種類の違反を繰り返した例です。

    行政書士法第1条の2第2項・第10条・第14条 ※条番号は処分書の表記

    出典日行連の公表(2025年3月14日の処分)

  13. 栃木県再逮捕(詐欺の疑い)

    その他の犯罪

    行政書士の男(50代)が、亡くなった親族に借金があったと女性に信じ込ませ、現金約2900万円をだまし取った疑いで栃木県警に再逮捕された。同じ女性の被害は計6千万円を超えるとされる例です。

    出典報道(2025年2月6日の報道)

  14. 愛知県業務停止9月

    虚偽申請・書類の偽造

    開発許可申請の依頼で自治体に事前協議を申請した後、自治体の長の公印が入った偽の事前協議結果通知書のデータを作り、依頼者にメールで送った。公の電磁的記録の不正作出として重大な非行とされた例です。

    行政書士法第10条・第14条、同法施行規則第14条第2号

    出典日行連の公表(2024年11月20日の処分)

処分の傾向

掲載中の最近の事例を、類型ごとに数えました。

  • 業務の不履行・虚偽の説明4件
  • 虚偽申請・書類の偽造1件
  • 職務上請求書の不正使用2件
  • 他士業の業務(非弁・非司など)1件
  • 名義貸し・補助者任せ1件
  • 帳簿・事務所などの義務違反3件
  • 補助金・給付金の不正1件
  • その他の犯罪1件

日本行政書士会連合会が公表している「過去の懲戒処分(知事処分)一覧」(平成17年9月〜平成19年11月の26件)を、当サイトで同じ類型に分けると次のとおりです。処分の内訳は、業務禁止6件・業務停止14件・戒告6件でした。

  • 業務の不履行・虚偽の説明3件
  • 虚偽申請・書類の偽造6件
  • 入管手続の不正3件
  • 職務上請求書の不正使用4件
  • 他士業の業務(非弁・非司など)2件
  • 名義貸し・補助者任せ5件
  • 帳簿・事務所などの義務違反1件
  • その他の犯罪2件

傾向から見えること

最近の事例でも過去の一覧でも、目立つのは「受任した手続きを進めず、進んでいるように説明する」例です。依頼人に言い出しにくいまま時間がたち、許可証や通知書の偽造にまで進んでしまうと、業務の禁止という最も重い処分になります。忙しいときほど、案件の進み具合を一覧で確かめ、遅れたらその時点で正直に伝えることが、いちばんの予防になります。

懲戒処分のしくみ

処分をする人行政書士の事務所がある都道府県の知事(行政書士法第14条)
処分の種類戒告/2年以内の業務の停止/業務の禁止(第14条)。行政書士法人は、戒告/2年以内の業務の全部または一部の停止/解散(第14条の2)
処分の理由行政書士法やこれに基づく命令・規則、知事の処分に違反したとき、または「行政書士たるにふさわしくない重大な非行」があったとき(第14条)
手続き業務の停止・禁止をするときは、公開の聴聞を行う(第14条の3)。だれでも、知事に事実を知らせて適切な措置を求めることができる(第14条の3第1項)。知事は事務所に立入検査ができる(第13条の22)
公表処分をしたときは、その都道府県の公報で公告する(第14条の5。官報ではない)。都道府県が記者発表をすることもあり、日本行政書士会連合会も「綱紀事案の公表」で知事処分を公表している
業務の禁止のあと業務の禁止の処分を受けてから3年を経過しない人は、行政書士になれない(第2条の2)
会による処分知事の懲戒処分とは別に、各都道府県の行政書士会が会則にもとづいて会員を処分することがある(このページでは、知事の懲戒処分と事件だけを載せています)
2026年1月の改正令和7年の改正法(令和8年1月1日施行)で、行政書士の使命(第1条)と職責(第1条の2:品位の保持、法令と実務に精通し公正かつ誠実に業務を行うこと)が定められた。行政書士でない人の業務の制限に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明記され(第19条)、両罰規定も整った(第23条の3)。この改正で条の番号がずれたため、以前の処分書の条番号は、今の条文と違うことがある

処分の基準

処分の重さの目安として、都道府県が処分基準を公表しています。たとえば大阪府の処分基準(2026年1月1日更新)では、違反の類型ごとに、選ばれる処分の種類が次のように示されています(行政書士個人の主なもの)。

違反の類型条文処分の種類
業務の誠実履行義務違反第1条の2第1項戒告・業務停止・業務禁止
他の法律で制限されている業務の実施第1条の3第2項など戒告・業務停止
二以上の事務所の設置第8条第2項戒告・業務停止
帳簿の備付け・保存義務違反第9条戒告・業務停止
信用失墜行為の禁止違反第10条戒告・業務停止・業務禁止
報酬額の掲示義務違反第10条の2第1項戒告・業務停止
依頼に応ずる義務違反第11条戒告・業務停止
守秘義務違反第12条戒告・業務停止・業務禁止
重大な非行第14条戒告・業務停止・業務禁止

類型ごとの注意点

どの類型も、最初は小さな「つい」から始まっています。開業したばかりのときほど、仕組みで防ぐことが大切です。

業務の不履行・虚偽の説明

掲載中の事例と過去の一覧で 7件

手続きをしていないのに「申請済み」「許可が下りた」と伝える。遅れを隠すうちに、許可証の偽造まで進んでしまう例が少なくありません。

同じことを起こさないために

  • 受任した手続きの進み具合を一覧で管理し、期限の近いものを毎週確かめる
  • 遅れたときは、その時点で正直に伝え、見通しを示す
  • 手続きが止まっている案件は、報酬を返す・引き継ぐ判断を早めにする

虚偽申請・書類の偽造

掲載中の事例と過去の一覧で 7件

実績・経歴・決算の数字を事実と違う内容で申請する、証明書を偽造する例です。依頼人の会社まで営業停止や指名停止になることがあります。

同じことを起こさないために

  • 経歴・実績・数字は、裏付けの資料(契約書・請求書・決算書)で確かめてから書く
  • 「少しだけなら」という依頼人の希望には応じず、できない理由を説明する
  • 補助者や職員が作った書類も、提出前に必ず自分で確かめる

入管手続の不正

掲載中の事例と過去の一覧で 3件

実態のない雇用契約や住所で在留資格を申請する、資格外活動を知りながら更新を申請する例です。刑事事件になることもあります。

同じことを起こさないために

  • 雇用・住所・学歴などの実態を、資料と面談で確かめる
  • 紹介者やブローカー経由の大量の依頼は、とくに慎重に受ける
  • 不自然な点があれば受任しない

職務上請求書の不正使用

掲載中の事例と過去の一覧で 6件

依頼のない人の名前で戸籍や住民票を取る、調査会社などの依頼で所在や家族関係を調べる例です。

同じことを起こさないために

  • 職務上請求書は、受任した業務に必要な範囲だけで使う
  • 使ったものは控えと帳簿で管理し、保管を厳重にする
  • 「所在を調べてほしい」だけの依頼は受けない

他士業の業務(非弁・非司など)

掲載中の事例と過去の一覧で 3件

報酬を得て示談交渉や破産の申立書作成などを行い、弁護士法・司法書士法などに違反する例です。

同じことを起こさないために

  • 行政書士の業務の範囲を、条文と日行連の資料で確かめておく
  • 範囲を超える相談は、提携する弁護士・司法書士・税理士などにつなぐ
  • ホームページの表現も、他士業の業務を受けると読めないようにする

名義貸し・補助者任せ

掲載中の事例と過去の一覧で 6件

登録のない人に業務をさせる、補助者に任せきりで自分は関与しない例です。

同じことを起こさないために

  • 補助者は届け出て、行政書士が指導・監督する
  • 受任・書類の確認・提出の判断は、行政書士が行う
  • 他社の職員が行政書士の名義で業務をする形はとらない

帳簿・事務所などの義務違反

掲載中の事例と過去の一覧で 4件

業務の帳簿を備えない、事務所を設けない、報酬額を掲示しないなど、行政書士法の基本的な義務を守っていない例です。ほかの違反と一緒に指摘されることが多くあります。

同じことを起こさないために

  • 業務の帳簿(事件の名称・年月日・報酬など)を備え、法定の期間保存する
  • 事務所と連絡先を確保し、報酬額を掲示する
  • 領収書の控えを保存する

預り金・報酬のトラブル

依頼人から預かったお金(手数料や供託金など)を流用する、報酬を受け取ったまま手続きをしない例です。

同じことを起こさないために

  • 預り金は事務所のお金と分けて管理し、使い道を記録する
  • 報酬は見積りと請求書で明確にし、受け取りを記録する
  • 手続きができなくなったら速やかに返金する

補助金・給付金の不正

掲載中の事例と過去の一覧で 1件

事実と違う内容で補助金や給付金を申請させる、不正な受給に関与する例です。

同じことを起こさないために

  • 申請内容(事業の実態・経費)を資料で確かめる
  • 成功報酬の大きさで判断を曲げない
  • 不正をにおわせる依頼は受けない

あわせて読みたい:依頼の断り方・賠償責任と保険・着手金・前受け・他士業との提携・人材の確保と組織づくり

よくある質問

Q. 行政書士の懲戒処分は、だれが行うのですか?

行政書士の事務所がある都道府県の知事が行います(行政書士法第14条)。日本行政書士会連合会や各都道府県の行政書士会が行うのは、会則にもとづく会員としての処分で、知事の懲戒処分とは別のものです。

Q. 懲戒処分には、どんな種類がありますか?

戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止の3種類です。業務の禁止を受けると登録が抹消され、処分から3年を経過するまでは行政書士になれません。

Q. 懲戒処分は公表されますか?

知事は処分をしたとき、その都道府県の公報で公告します(第14条の5)。あわせて記者発表をする都道府県もあり、日本行政書士会連合会も「綱紀事案の公表」で知事処分を公表しています。公表の期間が過ぎると、氏名などが伏せられることがあります。

Q. どんなことで処分を受けることが多いのですか?

このページに載せている最近の事例では、受任した手続きを進めずに申請済みと伝える例と、事務所の設置や帳簿などの基本的な義務の違反が多くなっています。過去の一覧では、虚偽の申請や書類の偽造、補助者に任せきりにする例、戸籍の職務上請求書の不正使用も目立ちます。

Q. 2026年1月の法改正で、何が変わりましたか?

令和7年の改正法(令和8年1月1日施行)で、行政書士の使命と職責が定められ、行政書士でない人の業務の制限に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明記されました。両罰規定の整備や、特定行政書士が代理できる不服申立ての範囲の拡大もあります。くわしくは総務省の行政書士制度のページをご覧ください。

Q. このページに氏名が載っていないのはなぜですか?

このページは、同じことを起こさないための参考としてまとめているためです。処分を受けた方の氏名・事務所名・会社名は載せず、3年を過ぎた事例は自動で外しています。出典は種類と日付だけを示し、リンクは貼っていません。

出典とこのページの更新

毎週月曜に、都道府県の発表と報道を確かめ、新しい事例があれば追加しています。事例は官公庁の発表を優先し、報道は全国紙・通信社・地方紙などに限っています。

※このページは、行政書士の方が業務の参考にするための情報提供です。個別の事案についての評価やご相談はお受けしていません。