行政書士の開業前にやっておくこと
合格して、いよいよ開業。何から手をつけるかで、最初の1年の進み方は大きく変わります。名刺や交流会の前に、決めておきたいこと・調べておきたいことを順番にまとめました。
Key pointsこの記事の要点
- 開業前に、ほしい収入と働き方の2つを決める
- 人脈づくりより先に、仕事を取れている事務所を調べる
- 最悪の場合を書き出し、資金の上限を決めておく
- 準備は「目標 → 業務 → 調査 → 資金 → 事務所 → 手引きと書式 → 入口」の順で
- 実務は、業務を決めてから手引き・書式をそろえて備える
最初に「どうなりたいか」を決める
開業の動機は人それぞれです。「資格を生かしたい」「自分のペースで働きたい」「収入を上げたい」。どれも立派な理由ですが、開業前にどのくらいの収入がほしいのかと、どんな働き方をしたいのかの2つは、はっきりさせておくことをおすすめします。
この2つがあいまいなまま走り出すと、仕事が増えても減っても、どこか満たされない状態になりがちです。
開業2年目のころ、月の売上は200万円を超え、手元に残るお金も十分にありました。それでも、朝から深夜までパソコンに向かってメールの返信、書類の作成、役所への提出、経理と、自分の時間はほとんどありませんでした。そこで気づいたのが、自分は書類を作る作業そのものより、事務所を経営することに魅力を感じていたということです。
そこから、実務の得意な行政書士に加わってもらい、自分は業務の説明とご依頼をいただくところに力を注ぐ形に変えました。今の形に落ち着くまで4年かかりましたが、最初から目標と働き方を考えていれば、もっと早く進めたと思います。
運営者 渡邉(2005年開業)ばりばり稼ぐのも、副業的に少しずつ続けるのも、どちらも正解です。大事なのは、自分で選んだ形に向かって準備することです。行政書士の仕事は労働集約型なので、収入を増やしたいなら「人を雇う」「単価を上げる」「仕組みにする」のどれかがいずれ必要になります。目標が決まれば、準備の中身も自然に決まってきます。
人脈づくりより先に、売れている事務所を調べる
開業前は「人脈もコネもないから、まずは交流会に出てみよう」と考える方が多いのですが、運営者がまずやったのは集客のための調査でした。
全国の、仕事を取れている行政書士事務所を、ホームページ・ブログ・SNSなどで徹底的に見ていきます。調べるのは次のような点です。
- どの業務を、どの地域の、どんなお客様に向けて出しているか
- ホームページの作り(何を最初に見せ、どこで相談を受けているか)
- 料金の出し方と、ほかの事務所との違いの伝え方
- どんな媒体(検索・広告・紹介・SNS)で仕事を得ているか
うまくいっている事務所には、必ず共通点があります。見つけた良い点は、そのまま写すのではなく、自分の業務や地域に合わせて組み立て直します。インターネットでの調査は、費用もかからず、開業前でもすぐに始められます。
提携先は「仕事を持って」探す
実務の外注先や他士業との提携は、仕事が取れてから探しても遅くありません。「開業しました。提携していただけませんか」とあいさつに回るより、「こういうご依頼があるのですが、お願いできますか」と相談するほうが、相手にとっても喜ばれる始まり方です。
最悪の場合を想定しておく
「開業して食べていけなかったらどうしよう」。この不安は、ほとんどの方が持っています。不安が大きくなるのは、何が起きるかわからないからです。最悪の場合に何が起きるかを書き出しておくと、怖さはずいぶん小さくなります。
| 起こりうること | 考えておくこと |
|---|---|
| 貯めた資金がなくなる | いくらまでなら使ってよいか、先に上限を決める。上限まで使ったらどうするかも決めておく |
| しばらく収入がない | 生活費の何か月分を手元に残すか。家族がいる場合は、借金を抱えない範囲で挑戦する |
| うまくいかなかった | 勤めに戻る・別の形で続けるなど、次の手を考えておく。失敗した経験は、次の挑戦の材料になる |
開業資金は、アルバイトで貯めた80万円と、日本政策金融公庫から借りた80万円の合計160万円でした。そのうち3分の1ほどを広告にあてています。もしだめでも、またアルバイトで生活を立て直せばいい。そう決めていたので、不安はあっても、必要以上に怖がらずに済みました。
運営者 渡邉(開業当時の実例)開業すれば、誰でも何かしら失敗します。最初から完ぺきな方法を探すより、失敗を前提にして、小さく直しながら進めるほうが結果的に早く軌道に乗ります。
準備は正しい順番で進める
開業準備でよくあるのが、順番の逆転です。たとえば、まだ扱う業務も決まらないうちに、デザインに凝ったホームページに大きな費用をかけてしまう。看板・名刺・事務所の内装にこだわって、肝心のご依頼の入口が手薄になる。
運営者がおすすめする順番は次のとおりです。
- 目標と働き方を決めるほしい収入と、どんな働き方をしたいか。ここが出発点です。
- 最初に扱う業務をしぼる何でも受けるより、まずは2〜3の業務に。選び方は「業務の選び方」の分野でくわしく書いています。
- 売れている事務所を調べるその業務で仕事を取れている事務所が、どこでどう見せているかを調べます。
- 資金の上限と、最悪の場合を決める使ってよい金額、生活費、だめだった場合の次の手まで。
- 事務所の場所を決める自宅か賃貸か。扱う業務とお客様の来方で決めます。
- 手引きと書式をそろえる扱う業務の役所の手引き、実務書、依頼を受けるときの書式を、開業前に手元に置きます。
- ご依頼の入口をつくるホームページは、最初は中身を優先。記事を積み上げ、見てくれる人が増えてから見た目を整えても間に合います。
実務の不安は、業務を決めてから準備すればよい
「集客できても、実務ができるか不安」という声もよく聞きます。運営者の渡邉も、実務の経験がないまま開業しました。
行政書士試験に合格した方なら、法律の文章を読み、手引きに沿って書類を整える力はすでに身についています。扱う業務が決まったら、役所の手引きと実務書を手に入れ、依頼を受けたときの流れ(聞き取り・見積り・委任状・受任の契約)を先に用意しておきましょう。あとは、役所と打ち合わせをし、お客様のご要望に応えるなかで、実務の力は自然に鍛えられていきます。
※制度や手数料などは変わることがあります。手続きの最新の内容は、各機関の公式の情報でご確認ください。


