01開業の準備

行政書士の事務所は、自宅か賃貸か

渡邉 徳人津田 拓也齋藤 史洋執筆現役の行政書士3人最終更新日読む時間約3分

「最初から事務所を借りるべきか」は、開業前にいちばんよく聞かれる質問のひとつです。正解は、扱う業務と、どんなお客様に来ていただくかで変わります。

Key pointsこの記事の要点

  • 自宅は費用を抑えられるが、面談・信用・安全・働き方の面で弱い
  • 資金に余裕があれば開業と同時に借りる。余裕がなければ集客を先にして、仕事が回り始めてから借りる
  • 立地は、扱う業務とお客様で決める。個人の相談は通いやすさ、会社の手続きは信用
  • 家賃は交渉できることがある。月5,000円の差は年6万円
  • レンタルオフィスで登録できるかは、契約の前に行政書士会に確かめる

自宅と賃貸、それぞれの良いところ・気をつけること

自宅賃貸の事務所
費用家賃がかからず、開業の費用を抑えられる家賃・敷金などの固定費がかかる
面談お客様に来ていただきにくい。喫茶店や訪問での面談になりがち事務所でゆっくりお話をうかがえる
信用住所を調べると自宅とわかり、会社とのお取引では不利になることも事務所を構えていること自体が安心材料になる
働き方通勤がない反面、仕事と生活の切り替えが難しい気持ちが切り替わり、人を雇うこともできる
安全自宅の住所をインターネットに公開することになる自宅と仕事の場所を分けられる

運営者の渡邉は、最初の1年ほどは自宅で開業し、2年目に事務所を借りました。自宅のときは費用が抑えられた反面、仕事と生活の区切りがつかず、気持ちの負担は思っていたより大きかったといいます。

自宅の住所は、いまは簡単に見られる

地図のサービスで建物の外観まで見られる今は、ホームページに載せた住所が自宅かどうかは、すぐにわかります。会社を相手にする業務では、それだけで比べられてしまうことがあります。家族と暮らす家の住所を公開することになる点も、開業前に考えておきましょう。

借りるなら、いつ借りるか

運営者の考えは、次のとおりです。

  1. 開業資金に余裕があるなら、開業と同時に最初から事務所でお客様をお迎えできるのが、いちばん有利です。
  2. 余裕がないなら、ホームページと広告を先に事務所にお金をかけて集客が手薄になるより、まずはご依頼の入口に投資して、仕事が回り始めてから借りる方が安全です。

事務所を借りると、毎月の家賃を払うために売上を立てる、という覚悟が自然に生まれます。一方で、家賃が払えるか不安で眠れない、というほどなら、まだ自宅で始めておくほうが無難です。事務所はあくまで目標を達成するための手段で、借りること自体が目的ではありません。

立地は、扱う業務とお客様で決める

事務所を借りるなら、立地はとても大切です。同じ家賃でも、場所によって来ていただけるお客様が変わります。

業務の種類向いている立地
相続・離婚など個人の方の相談駅から歩いて5分ほどの場所。地方なら駐車場のある幹線道路沿い
会社の手続き・許認可オフィス街や、信用につながる地名の場所。会社の多いビルの中も有利

事務所は駅とつながった商業ビルに入っていました。受付が常にいて迷うこともなく、人の行き来も多い場所です。同じビルに入っている会社から、インターネットで調べてご依頼をいただくことが何度もありました。近くにある、というだけで、お客様には大きな安心になるようです。

運営者 渡邉

法人のお客様が多いなら、オフィス街に事務所を構えるのがおすすめです。東京なら「銀座」のように、地名そのものが信用になる場所もあります。おもしろいのは、住宅街にお住まいの方が、わざわざ銀座の事務所まで相続の相談に来られることです。理由をうかがうと「近所の専門家には相談しにくい」とのことでした。家族のことやお金のことは、地元から少し離れた事務所に相談したい方もいるのです。

運営者 齋藤(東京・銀座)

大きな道路に面した1階で看板を出している事務所には、通りがかりの方が相談に来られることもあります。家賃が少し高くても、看板が毎日の広告になると考えれば、元が取れることもあります。ただし家賃は毎月の固定費なので、費用に見合うかは冷静に見積もりましょう。

家賃は交渉できることがある

事務所を借りると、机・いす・パソコン・応接セットなど、家賃以外にも思った以上にお金がかかります。渡邉の場合、2年目に事務所を借りたときは、保証金も含めて120万〜140万円ほどかかりました。

備品の値引きは難しくても、家賃は交渉に応じてもらえることがあります。大家さんにとっては、空室のままにしておくより、少し下げてでも入ってもらう方がよい場合が多いからです。

  • 「最初の半年だけ」「最初の1年だけ」家賃を下げてもらう
  • 何件も不動産会社を回り、条件を比べてから決める
  • 借りたあとも、更新のときなどに相談してみる

月5,000円下がれば、年間で6万円です。その分を広告に回すことができます。また、士業の事務所は家賃の滞納が少なく、大家さんにとって安心して貸せる相手だと言われることもあります。

レンタルオフィスという選択肢

最近は、受付や会議室がついたレンタルオフィス・シェアオフィスを使う行政書士も増えています。

東京の事務所を、自前で借りていたオフィスから、駅近くの新しいビルのレンタルオフィスに移しました。毎月の支払いは大きく下がり、退去のときも短い予告で出られます。建物の入口や会議室がきれいで、移ってすぐ、昔からのお客様にも「立派な事務所ですね」と言っていただけました。浮いたお金は、広告やスタッフの給与に回しています。

運営者 渡邉(2020年の実例)

ただし、行政書士の事務所として登録できるかどうかは、行政書士会の確認が必要です。専用の区画があるか、表示を出せるか、書類を安全に保管できるかなどを求められることがあるので、契約の前に、所属する行政書士会に確かめておきましょう。

※制度や手数料などは変わることがあります。手続きの最新の内容は、各機関の公式の情報でご確認ください。

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