01開業の準備

行政書士の開業資金と、借入れの考え方

渡邉 徳人津田 拓也齋藤 史洋執筆現役の行政書士3人最終更新日読む時間約4分

開業資金は、多すぎて困ることはありません。何にいくらかかるのかを先に見積もり、手元に残すお金と、借りるお金を分けて考えておくと、開業後に慌てずに済みます。

Key pointsこの記事の要点

  • 開業資金は「登録・事務所・備品・集客」と「運転資金・生活費」に分けて見積もる
  • 登録には登録免許税3万円・登録手数料2万5千円と、会ごとに異なる入会金がかかる
  • 一般的な開業なら200万〜300万円がめやす
  • 運転資金は月の支出の3か月分を最低限、できれば6か月分
  • 公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は自己資金の要件がなくなったが、貯めてきた記録と事業計画書は今も大切

開業にかかるお金の全体像

行政書士の開業に必要なお金は、大きく分けると次の6つです。最初の4つは開業のときに出ていくお金、残りの2つは、仕事が入るまでの間も出ていき続けるお金です。

項目内容
登録の費用登録手数料・登録免許税・行政書士会の入会金。登録後は毎月の会費
事務所賃貸なら敷金・礼金・仲介手数料。自宅なら引越しや電話回線など
備品パソコン・複合機・机・応接セット・名刺・職印など
集客ホームページの制作、最初の広告費
運転資金家賃・通信費・会費・広告費など、売上がなくても出ていく事務所のお金
生活費事務所の売上から給料が出せるようになるまでの、自分の生活費

見落としやすいのは、下の2つです。開業してすぐに仕事が入るとは限らないので、売上がゼロの月が続いても困らない額を先に確保しておきます。

登録にかかる費用

行政書士として仕事をするには、日本行政書士会連合会への登録と、事務所のある都道府県の行政書士会への入会が必要です。登録のときには、次の費用がかかります。

  • 登録免許税:30,000円(収入印紙)
  • 登録手数料:25,000円
  • 入会金:都道府県の行政書士会ごとに異なります
  • 会費:登録後、毎月かかります(会ごとに異なります)

たとえば青森県行政書士会の登録申請の案内(2025年)では、入会金が120,000円、会費が月4,700円とされています。入会金は会によって金額が違うので、開業する都道府県の行政書士会の案内を必ず確かめてください。

実例:自宅兼事務所を借りて開業した場合

運営者の知り合いの行政書士が、大阪府内で開業したときの費用です(扶養家族なし、自宅兼事務所を新しく借りて開業。2011年当時の金額です)。

項目金額
生活資金(13万円×6か月)70万円
運転資金(15万円×6か月)90万円
事務所の礼金・引越し11万円
パソコン・電話とFAX・プリンター・机・応接セット24万円
登録免許税・入会金など30.5万円
名刺・封筒・ゴム印など1万円
ホームページの制作20万円
合計246.5万円

テナントを借りたわけでもないのに、思った以上にかかっています。それでも、運転資金の半年分は決して多くはありません。開業直後に広告で勢いをつけたいなら、広告費も別に見ておくとよいでしょう。この方は開業前からホームページを準備していたので、開業してすぐにホームページからのご依頼が入り始めたそうです。

一般的なケースなら、200万〜300万円がひとつのめやすになります。

正直に言うと、私の開業のときはここまで準備していませんでした。自宅で開業したので生活費はあまりかからなかったものの、運転資金は2か月分もなかったと思います。その分、最初の数か月は気が休まりませんでした。これから開業する方には、手元のお金に余裕を持っておくことを強くおすすめします。

運営者 渡邉

運転資金は「月の支出」の何か月分を持つか

手元に置いておくお金は、よく「月商の1か月分」と言われます。ただ、1か月分は本当にぎりぎりの線です。運営者は、月の支出の3か月分を最低限、できれば6か月分を持っておくことをすすめています。

ポイントは「月商」ではなく「月の支出」で考えることです。たとえば月商100万円で300万円の現金があっても、毎月の支出が150万円なら、何も手を打たなければ6か月で現金はなくなります。

支出は、すぐには減らせない

売上が落ちたときに、すぐに経費を減らせるとは限りません。事務所の解約は数か月前の予告が必要なことが多く、人を雇っていれば翌月から急に減らすこともできません。6か月分を下回ってきたら、早めに経費の見直しや資金の手当てに動くのが安全です。

開業資金を借りるなら

自己資金だけで足りない場合は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」が使えます。新しく事業を始める方や、事業を始めておおむね7年以内の方が対象で、限度額は7,200万円、返済期間は運転資金で10年以内です(公庫の公式サイトによる。2026年11月時点)。

以前は「創業資金の一定割合の自己資金」が要件になっていましたが、2024年4月に制度がまとめ直され、今の公庫の案内には自己資金の要件は書かれていません。とはいえ、審査で見られないわけではありません。次の2つは、今も大切です。

  1. 自分で貯めてきたことがわかるお金開業に向けてこつこつ貯めてきたことは、通帳の記録で示します。手元の現金で貯めている方は、早めに銀行口座へ移しておきましょう。
  2. 筋の通った事業計画書どの業務で、どのお客様から、月にいくらの売上を立て、経費をどうまかなうのか。資格があるだけで貸してもらえるわけではありません。

自分で借りておくと、いいこともある

借入れは「なるべく避けるもの」と考える方も多いのですが、運営者の考えは少し違います。

行政書士法人のころは手元にお金があったので、長いあいだ借入れをしていませんでした。今思えば、きちんと借りて、もっと積極的に投資しておけばよかったと思います。その後、日本政策金融公庫や信用金庫から借入れをして、金融機関との付き合い方や、面談で何を聞かれるかを、身をもって知ることができました。

運営者 渡邉

借入れの額より手元の現金が十分に多ければ、借金に追われる状態にはなりません。金融機関とのつながりは、いざというときの備えになりますし、自分で借りた経験は、これから起業するお客様と話すときにも生きてきます。

※登録の費用・融資の条件は変わることがあります。手続きの前に、日本行政書士会連合会・各都道府県の行政書士会・日本政策金融公庫の最新の案内をご確認ください。

※制度や手数料などは変わることがあります。手続きの最新の内容は、各機関の公式の情報でご確認ください。

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