01開業の準備

行政書士の年収・売上の現実

渡邉 徳人津田 拓也齋藤 史洋執筆現役の行政書士3人最終更新日読む時間約3分

「行政書士は食べていけるのか」「年収はどのくらいか」。開業前にいちばん気になるところです。平均の数字より大事なのは、売上の中身と、自分に必要な年収から逆算することです。

Key pointsこの記事の要点

  • 平均年収の数字より、自分に必要な年収から逆算する
  • 1人事務所で無理なく回せるのは、月70万〜100万円がめやす。そこから外注・雇用などを考える
  • 年商1,000万円でも、経費を引いた所得は500万円前後。再投資も必要
  • 単発の業務に加えて、毎年続く業務を持つと売上が安定する

平均年収の数字は、あまり当てにならない

インターネットや資格の案内には、行政書士の平均年収の数字が出ています。ただ、行政書士は、本業で大きな事務所を経営する人から、ほかの仕事のかたわら登録している人までさまざまです。平均をとっても、これから開業する方の参考にはなりにくいのが実際です。

弁護士でも税理士でも同じですが、しっかり稼いでいる事務所もあれば、ほとんど売上のない事務所もある、というのが業界の姿です。平均の数字に一喜一憂するより、自分がどんな働き方で、どれだけの収入を得たいのかを決め、そこから逆算するほうが役に立ちます。

1人事務所で回せる売上のめやす

運営者の経験では、1人で実務も集客も事務もこなす場合、月の売上70万〜100万円あたりが、無理なく回せる上限のめやすです。

1人でやっていたころ、高い報酬の業務と通常の業務をあわせて、ひと月で150万円以上を売り上げたこともあります。ただ、そのころは役所や依頼先を回ると1日が終わり、書類作りや更新作業は夜中まで。休みもほとんどなく、体を壊して入院したこともありました。近くの役所とお客様を4件回るだけで、朝に出て帰りは夕方です。1人の時間には、どうしても限りがあります。

運営者 渡邉

売上がこのあたりに届いたら、次の選択肢を考える時期です。

  • 外注する:書類作成の一部や、ホームページの更新などを外に頼む
  • 補助者を雇う:毎月の固定費は増えるが、事務所として扱える量が増え、自分の時間も生まれる
  • 単価を上げる・業務をしぼる:件数を増やさずに、売上と時間の両方を整える
  • あえて広げない:今の規模で、時間に余裕のある働き方を選ぶ

どれが正解ということはありません。どんな生活を送りたいかで選んでください。ただ、どの道を選ぶにしても、まずは売上をこのあたりまで持っていかないと、選択肢そのものが生まれません。

年商1,000万円で、手元に残るのはいくらか

年商1,000万円は、開業した方の最初の目標としてよく挙がる数字です。月にすると約83万円です。ただし、これは売上であって、手取りではありません。

差し引かれるもの主な内容
事務所の経費家賃・会費・通信費・広告費・ホームページの費用・外注費・車両費・事務用品など
税金所得税・住民税・個人事業税・消費税(課税事業者の場合)
社会保険国民健康保険・国民年金
将来への備え退職金の代わりの積立(小規模企業共済など)・老後の資金

経費を差し引いた所得は、多くの場合500万円前後になり、そこから税金と社会保険を払います。さらに、売上を維持して伸ばしていくには、広告やホームページへの再投資が欠かせません。年商1,000万円は、決して楽に暮らせる額ではない、というのが運営者の実感です。

会社員なら年齢とともに給与が上がり、退職金や厚生年金もあります。独立した行政書士は、自分で売上を伸ばさない限り収入は増えません。最初の目標を達成したら、次の目標を少しずつ上げていく。その前提で事業の計画を立てておきましょう。

単発の業務と、続く業務

行政書士の業務の多くは、1回で終わる単発の仕事です。単発の業務だけで売上を立てていると、毎月、新しいお客様を見つけ続けなければなりません。

新しい会社法ができたころは、会社設立のご依頼がホームページから次々に入り、1人で月250万円ほど売り上げた時期もありました。ただ、こんなことがいつまでも続くはずがない、という不安もありました。そこで、少しずつ建設業許可、特に経営事項審査へと軸足を移しました。経審は毎年のお付き合いになるので、関与先が増えるほど、毎年の売上が積み上がっていきます。

運営者 渡邉

毎年の更新や届出、顧問契約など、続く業務を持つと、売上は安定しやすくなります。単発の業務で新しいお客様と出会い、続く業務でお付き合いを重ねる。この組み合わせが、事務所を長く続ける土台になります。

必要な年収から逆算する

最後に、自分にとって必要な年収から、売上の目標を逆算してみましょう。

  1. 生活に必要な手取りを決める家族の人数や住まい、将来への備えから、年にいくら必要かを出します。
  2. 税金・社会保険・経費を足して、必要な売上を出す手取りの2倍前後が、必要な売上のひとつのめやすです。
  3. 平均の報酬額で割って、必要な件数を出すたとえば年商1,000万円なら、10万円の業務を年100件、月8〜9件です。
  4. その件数を、どの業務とどの集客で取るかを決めるここが、業務の選び方と集客の計画になります。

年収300万円で満足して暮らしている行政書士もいれば、年収1,000万円を超えてもまだ上を目指す行政書士もいます。大切なのは、自分で決めた目標に向かって、計画的に進むことです。

※制度や手数料などは変わることがあります。手続きの最新の内容は、各機関の公式の情報でご確認ください。

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