1人法人・事業譲渡・規模の考え方
運営者の渡邉は、開業2年目に行政書士法人を作り、のちに事業の一部を譲り、個人の事務所に切り替えました。大きくすることも、小さくすることも経験してきた立場から、法人化と規模の考え方をまとめます。
Key pointsこの記事の要点
- 行政書士法人は社員1人でも設立できる。何のために法人にするかを先に考える
- 事業譲渡は、時間とリスクを減らす選択肢。値付けは年間売上の2年分が一つの目安
- お客様の了承と守秘義務を最優先に、引き継ぎ先を見極める
- 規模を大きくすると、負担も大きくなる。自分の望む働き方で規模を決める
行政書士法人は、1人でも作れる
以前は、行政書士法人の社員(出資して経営する行政書士)は2人以上必要でしたが、法改正で、社員1人でも行政書士法人を設立できるようになりました(令和3年6月から)。
| 法人化で変わること | 考えておきたいこと |
|---|---|
| 事業と個人のお金が分かれる | 役員報酬・社会保険・退職金など、お金の設計が変わる。税理士と試算する |
| 事務所を続けやすくなる | 人が入れ替わっても、法人として仕事と契約を引き継げる |
| 支店(従たる事務所)を出せる | 複数の地域で事務所を構えられる |
| 費用と手間が増える | 設立・登記・会費(法人の分)・決算・社会保険の手続き |
| 責任が軽くなるわけではない | 業務の責任は、社員の行政書士が負う |
「法人にすれば信用が上がって仕事が増える」とは限りません。法人化そのものより、何のために法人にするのかを先に考えましょう。消費税の扱いも、インボイスの登録の有無や売上の規模で大きく変わるため、税理士との相談が欠かせません。
事業譲渡という選択
建設業を中心に200社をこえていた顧問先のうち、一部を譲り、50社ほどに減らしたことがあります。まとまったお金が入り、業務の量とリスクは大きく減りました。スタッフの数も減らしたので経費も下がり、利益はあまり変わらないまま、時間が増えました。私にとって最も大切なのは時間です。利益が確保できていれば、売上の大きさにこだわる必要はないと考えています。
運営者 渡邉顧問先を譲るときの値付けの目安として、運営者は「年間の売上の2年分」を理想と考えてきました。たとえば毎年20万円の経審を依頼してくれる会社なら、1社40万円です。毎年確実に続く業務で、ほかの手続きや紹介も期待できることを考えると、決して高すぎる数字ではありません。ただし、買う側には業務を担う人件費もかかるため、実際には分割での支払いなど、条件の話し合いになります。
- お客様には、必ず事前に説明し、了承を得てから引き継ぐ
- 守秘義務に配慮し、引き継ぐ情報は必要な範囲にとどめる
- 引き継ぎ先の事務所の体制と対応の質を、しっかり確かめる
「規模の利点」の裏側
規模を大きくすると、仕入れや広告の効率は上がります。けれども、大きくなるほど、負担も大きくなります。
- 人件費・社会保険・家賃・広告費などの固定費が増え、売上を落とせなくなる
- 雇用や労務の責任、トラブルの規模も大きくなる
- 年商が大きくなっても、経費と備えが増えるため、個人の手取りは思ったほど増えない
個人のお金と時間を大きくしたいなら、むやみに拡大する必要はありません。拡大を目指すなら、負担の部分にも目を向け、自分の覚悟と情熱を見極めてから進めましょう。
※制度や手数料などは変わることがあります。手続きの最新の内容は、各機関の公式の情報でご確認ください。


